アフロディーテの誕生と真珠の物語

愛と美と情熱の女神

アフロディーテの誕生には、いくつかの説があります。

ひとつは、主神ゼウスと女神ディオーネの子として誕生したというホメロス説。

ひとつは、ティーターン神族であり、農耕の神クロノスの子孫という説。(誰説?)

さらに、もうひとつは、今回ご紹介するヘシオドス説です。

原初神である大地の女神ガイアは、自らの力により、天空神ウラノスと、海神ポントス(ポントスは、ガイアと、原初神で天空神であるアイテルの子という説もあり。)を産みます。

ガイアは、息子であるウラノスを夫とし、二人の間に、ティーターン神族と呼ばれる子供たちや、巨人(魔神)の子供たちを授かりました。

しかし、ウラノスは、ガイアとの間に授かった子供たちを幽閉しました。その理由は、ウラノスが、醜い巨人たち(一つ目だったり、50の頭と、100の手足を持っていたりしたため)を嫌ったためとも、ティーターン神族を恐れたためとも言われているようです。

子供たちを夫に幽閉されたガイアは、ウラノスに怒りを覚えました。ガイアは、ウラノスとの間に出来た末子で、ティーターン神族であり農耕の神でもあるクロノスに鎌を渡ます。クロノスは、その鎌でウラノスを去勢し、男性器を海に放り投げました。そして、ウラノス自身を追放しました。

海へ投げられたウラノスの男性器には、海の波が集まり、泡が纏わりつきました。そして、纏わりついた泡(aphros/アフロス・アプロス)から、性愛と美と情熱の女神アフロディーテが生まれました。アフロディーテの体に纏わりついていた泡の水滴は、海に零れ落ちました。零れ落ちた水滴は真珠になりました。このことから、アフロディーテは「Pearl of the sea」とも呼ばれます。

更に、アフロディーテが生まれたときに紡いだ息が結晶となって、ローズクォーツとなったという説や、水晶にアフロディーテの吐息がかかって、ローズクォーツとなったというお話もあるようです。

ちなみに、ご存知とは思いますが、このアフロディーテは、ローマ神話では、ウェヌスとなり、その英語読みは、ヴィーナスです。アフロディーテは、貝の舟に乗って波に漂ううちに(貝の舟に乗らず、ただ波に身を任せていた…という説もあり)どんどんと成長し、キプロスへ行き着きます。あの有名な絵画、「ヴィーナスの誕生(ボッティ・チェリ)」は、こんなところから誕生したのでしょうね。

ところで、宝石とは関係ありませんが、アフロディーテが生まれたとき、一緒に薔薇も生まれたとか、アフロディーテの誕生を祝うために、神々が薔薇を作ったなどという説もあるようです。

キモッコウバラ ロサ・モリス
−左:キモッコウバラ。右:ロサ・モリス。どちらも原種−

[ 写真提供 : バラの図鑑 ]

余談ですが、父ウラノスを追放したクロノスは、ウラノスとガイアから、自らの子供たちに倒されると予言されていました。その予言を信じたクロノスは、彼の兄弟姉妹であり、妻でもある大地の女神レアーとの間に儲けた子供たちを次々と飲み込んでいきます。

母レアーの機転(石に服を着せ、それをクロノスに渡した)により父に飲み込まれることを避けられたゼウスは、ひっそりと育てられました。(ガイアに育てられたという説と、ニンフに育てられたという説あり)

大きくなったゼウスは、父を討つ事を決意します。ゼウスは、先ず父クロノスに飲み込まれた兄弟たちを助けます。兄弟たちは、父ウラノスに対して、復讐を遂げようとします。後にそれは、ティターン神族と神々の戦いとなりました。不老不死の神々同士の戦いであったため、大戦争(ティタノマキア)に発展し、10年もの間決着がつきませんでした。

ゼウスは、ガイアの助言を受け、大戦争に終止符を打ちました。クロノスは結局、両親の予言通りに、自らの子に倒されました。それはまた、父ウラノスと同じ道を辿る…。二の舞を踏んだということでもあるのです。

<ギリシア神話>

※アプロディーテ、アプロディテ、アプロディーテー、アフロディーテー、アフロディテなど書かれることもあるようですが、当サイトでは、アフロディーテで統一します。

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