水の精 クリティとヘリオトロープ

愛の嫉妬、愛の悲しみ

太陽神ヘリオスは、ある日、美しいバビロンの王女レウコトエに恋をしました。ヘリオスは、レウコトエの母に化け、レウコトエの部屋へ忍び込み、愛を告白します。そして、その思いは、レウコトエに通じました。

しかし、ヘリオスの恋人で、水の精クリティは、嫉妬に駆られます。そして、クリティは、レウコトエの父であるバビロンの王にこのことを告げ口しました。

バビロンの王はは大変に厳格で、このことに対して、深く憤りました。そして、レウコトエの弁明も聞くことなく、レウコトエを生き埋めにしたのです。

これを知ったヘリオスは、すぐにレウコトエの元へ向かいましたが、時既に遅し。レウコトエは冷たくなっていました。ヘリオスは、深く悲しみ、レウコトエに神酒(ネクトル)をかけました。レウコトエの身体は、溶けていき、そこに乳香(かんらん樹)が芽を出し、後に、香しい香りを放つ大木となりました。

レウコトエが亡くなっても、ヘリオスは、クリティの元へ戻りませんでした。

クリティは嘆き悲しみ、9日間、何も食べず、ただ空の下、太陽の運行を見ていました。(ヘリオスの仕事は、毎日、火の馬車を操って、太陽を運行させること)

…そして、とうとうクリティは、ヘリオトロープになってしまいました。

<ギリシア神話>


是非読んでいただきたい(個人的)追記

このお話は、諸説あり、クリティの恋人は、アポロンであるという説。また、ヘリオス(又はアポロン)が愛したのは、レウコトエではなく、クリティの姉であったり、また別の女神であったりする説もあるようです。

さて、ヘリオトロープは、太陽の方を向くという意味のある言葉です。石好きさんならば、ヘリオトロープ=ブラッドストーンであると思います。ヘリオトロープ(ブラッドストーン)は、「石の赤い点が太陽に影響されているから」とか、「エジプトのヘリオポリスで採れたから」と言われています。しかし、語源と神話を考えると、「石の赤い点が太陽に影響されているから」という語源でないと、このお話は、成立しません。

ところで、ヘリオトロープは、鉱物だけではなかったのです。それは、植物です。それも、ひとつではありません。

クリティの神話のヘリオトロープは、植物としても語られています。ただし、その際のクリティの恋人は、アポロンであったとされていることが多いようです。

さて、植物についてですが、ひとつめは、キンセンカです。日の出と共に開花し、日の入りと共に花を閉じる。そのため、ヘリアントス(太陽(helios)+花(anthos)/太陽の花)と呼ばれていました。

ふたつめは、ヒマワリです。ご存知のように常に太陽の方向へ花を開花させるヒマワリ。そして、現在、ヘリアントスは、ヒマワリの学名となっています。ただし、この説は個人的には、「太陽の花」あるいは、「太陽の方を向く」というイメージから、後にキンセンカに取って代わったものではないかと思います。

さて、みっつめは、ヘリオトロピウム(学名)(和名、キダチルリソウ)です。一般的には、ヘリオトロープと呼ばれており、香料の原料としても知られています。紫又は、白の花をつけ、古くは太陽の向きとともに、花も向きを変えると思われていました。

ブラッドストーン、キンセンカ、ヒマワリ、キダチルリソウ。クリティは、この中の何に身体を変えたのでしょうか?個人的には、キダチルリソウか、キンセンカを押したいところです。。。あ、でも、そうなったら、「宝石と神話」には関係なくなってしまいますね。まぁ、こんな風に言われている神話もあると思っていただければよいかなと思います。

キンセンカ ヒマワリ
−左:キンセンカ。右:ヒマワリ。−

[ 写真提供 : 季節の花 300 ]

キダチルリソウ
−キダチルリソウ。−

[ 写真提供 : 四季の花 ]

この個人的追記部分については、あくまでも、個人的意見ですので、ご理解のうえ、ご覧下さい。

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