グレート・ムガル

謎多き伝説のダイヤモンド

The GREAT MOGUL



スペシャル企画
あの、タベルニエ氏にインタビュー実現!

幻のグレート・ムガル
その謎を追え!


インタビュアー(以下、 「それでは、グレート・ムガル(The GREAT MOGUL)を見たことがあるという、宝石商であり、旅行家でもある、フランス人のタベルニエ(1605 - 1689)さんにお話を伺います。タベルニエさん、よろしくお願いします。」

タベルニエ(以下、 「よろしくお願い致します。」

「それでは、始めさせていただきます。タベルニエさんは、職業柄、随分とたくさんの宝石をご覧になられていると思いますが。」

「そうですね。商売以外でも、たくさんの宝石を見てきましたね。ことに、ムガル帝国第5代皇帝であったシャー・ジャハン(1592 - 1666)のコレクションは、素晴らしいものでした。彼は、稀代の宝石コレクターです。そして、素晴らしい目利きであったとも思います。」

「グレート・ムガルについて伺います。グレート・ムガルをご覧になったのはいつ頃ですか?」

「私がアウラングゼーブ(アウラングゼーブ・アーラムギル帝(1618 - 1707) / アーラムギールⅠ世)に謁見した時のことですね。1665年のことではなかったかと思います。」

「グレート・ムガルは、どんな宝石でしたか?」

「グレート・ムガルは、280カラットでローズカットのダイヤモンドでしたね。シャー・ジャハンのコレクションのひとつでした。アウラングゼーブ曰く、1650年ごろに、インドのゴルコンダ…いや、キストナ渓谷のコラールだったかな?如何せん、古い記憶なので、曖昧で申し訳ないのですが、そこで発見されたようです。原石では787.5カラットあったようですね。どなたかからの献上品であったようです。」

「シャー・ジャハンが貰った時は、原石だったんですか?」

「原石でした。彼が、グレート・ムガルの原石をカットさせたと伺いましたので。どうやら原石では、インクルージョンなどが多く、それが目立っていたようなので、カットすることによって、美しさを引き出し、それらを目立たないようにしようと考えたようですね。」

「タベルニエさんは、グレート・ムガルはカットしたほうが良かった…というか、美しくなったと思いますか?」

「それは、難しい質問ですね。私は原石の状態では見たことがありません。ですから、比べることはできないのです。ただし、ダイヤモンドを原石の状態で美しいと感じる人は少ないのではないかと思います。あなたは、ダイヤモンドの原石を見て美しいと感じますか?やはり、カットしてあるダイヤモンドを美しいと感じるのではないですか?」

「…確かにそうですが…。でも、カットしたことで、原石の凡そ35%の大きさでしか無くなってしまったのはもったいないと思いませんか?」

「シャー・ジャハンも、こんなに小さくなってしまったのは、予想外だったようですよ。カットを担当したのがベネチアから来ていたボルジオだったのですが、彼は、カットに際して大きな失敗を犯してしまったようです。シャー・ジャハンは、ボルジオに予定していた報酬を与えず、代わりに罰を科しました。命を差し出す代わりに、財産の没収したのです。しかし、何をしたところで、何を言ったところでグレート・ムガルは、元には戻りません。とても残念なことです。」

「ところで、グレート・ムガルは、タベルニエさんの書かれた『六回の航海』にしか出てこない宝石なのですが?」

「それは、どういう意味でしょう。」

「いえ…、あのぅ…。」

「私が、存在しないものを存在したように作り上げたという意味ですか?」

「い、いいえ、そんなつもりは…。」

「心外ですね。『六回の航海』には、私自身が見たこと、そして感じたことしか書いていないのですよ。」

「あのぅ…。その後のグレート・ムガルの行方についてご存知の事があれば…と思っただけなんですが…(ゴニョゴニョ…)。」

「それは、失礼致しました。私がグレート・ムガルを拝見したのは、後にも先にもあの時だけですし、シャー・ジャハンは、小さくてつまらない石になってしまったと嘆いたと伺いました。アウラングゼーブは、父であるシャー・ジャハンの宝石に対する目利きには、信頼…というよりも、信用ですね。信用していましたから、彼がつまらない石になったと言えば、そうなのだと思い込み、それだけの扱いとなってしまった。その結果として、歴史に埋もれてしまったのかもしれませんね。ですから、私が拝見したのも、歴史に埋もれてしまう寸前の事だったのかもしれません。もしくは、敢えて、歴史に埋もれさせたか…。」

「敢えて…ですか?」

「そうです。シャー・ジャハンの宝石コレクションはとても有名でした。ですから、どんな宝石がコレクションされているのかも、内外に伝わっていました。その中で、まだ内外に知られていない宝石があれば、アウラングゼーブ、あるいは、その後の皇帝が隠し財産にするには、ピッタリなのではないでしょうか。」

「では、グレート・ムガルは、隠し財産となった…ということでしょうか。」

「それは、そのような可能性もある…といった仮説、しかも、私の勝手な解釈であって、事実は、判りません。真実を知りたければ、それこそ、私ではなく、シャー・ジャハンか、アウラングゼーブを呼べば良かったのではないですか?」

「…。」

「彼らがこのような席に来るとは思えませんが…ね。」

「…。ところで、グレート・ムガルは、名前を変えて現在まで受け継がれているという説もありますが?」

「ほぉ。どのような説でしょう。いや、私はあの時代の事しか知らないものですよ。」

「一番有名なのは、グレート・ムガル=オルロフ説ですね。」

「ほほぅ。…しかし、一番有名なのは、ということは、他にも説がある。ということですね。」

「はい。他にも、コ・イ・ヌール説や、ダリャ・イ・ヌール説などがあるようですが…。」

「そうなのですか。…なるほど…。おっと、お約束の時間が過ぎていますね。私はこれで失礼させていただきますよ。」

「えぇ〜っ。待ってくださ〜い。タベルニエさん。まだ聞きたいことがあるんですよ。」

「大変残念なのですが、これ以上コチラにいると、アチラの世界に戻れなくなるのですよ。門限があるのでね。それでは。」



最後までお付き合い頂いて、ありがとうございます。当然ながら、このインタビュー記事は、フィクションです。

グレート・ムガルについては、噂が噂を呼び…、いろいろなお話と結びついているようで、タイヘンなジタイとなっています。こんな説、あんな説があるよ〜という紹介のしかたも考えたのですが、何度書いても上手く説明できません。(もともと、文章力が無いので今更なのですが。)

「グレート・ムガル」は、伝説の中の伝説!という感じのダイヤモンドですから、絶対に外すわけにはいかない、という事で、今回はお遊びにして、お茶を濁そう…なんてフヌケなことを思いついてしまいました。

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