パパラチアサファイア
スリランカの蓮の花
Padparadscha Sapphire
化学組成…Ａｌ２Ｏ３
硬度…９
語源…パパラチア/パパラチャ(padparadscha)
シンハリ語「蓮の花」
色の起源…クロム（Cr）,ニッケル（Ni）
結晶系…三方晶系
比重…４．００
屈折率…１．７６−１．７７
複屈折量…０．００８
光沢…ガラス状
サファイアの中で唯一独立した名前を持つサファイア。それがパパラチアサファイアです。
キング・オブ・サファイアともいわれるこのサファイアは正に蓮の花と呼ぶにふさわしい、ピンクともオレンジともつかない微妙な色合いでその中間の色をしています。もちろん、少しピンク寄りやオレンジ寄りの色もありますが、それはあくまでもピンクオレンジと呼ばれる色の中でのことです。
パパラチアサファイアは希少性があり、また色も日本人好みであったために、日本では「パパラチア」という名前があれば、値段が高くでも売れていました。バブルという後押しもあってのことだろうと思いますが。そして、それは、微妙な色のピンクサファイアやオレンジサファイアを「パパラチア」の名前を冠して売るという詐欺まがいの方法だったのです。
また、ベリリウムによる処理を行い、パパラチア色のサファイアにして売っていることがあるようです。この処理をしてもすべてのサファイアがパパラチア色になるわけではないようですが、処理をしてあることは事実です。当時、このベリリウム処理を施したサファイアはマダガスカル産が殆どでした。そのために、一時マダガスカル産のパパラチアサファイアはすべてにおいてベリリウム処理が行われており、処理していないパパラチアサファイアは産出しないのではないかと言われたほどです。ベリリウム処理をしてあるものは、天然（未処理石、あるいは、エンハンスメント石）なのか、天然石ではない（トリートメント石）のか…。かなり議論されたようです。先ほども述べたように、ベリリウム処理をしても、すべての石がパパラチア色になるわけではないのです。しかし、トリートメントは、すべての石がその色になる筈だと…。
このことより、現在でも一部宝石店などですこしでも「エンハンスメント」や「トリートメント」をしてある石を「天然宝石」として扱わないようにしようという運動（？）が行われているようです。「天然」と言うからには、カット・研磨以外のことがしてあるのはおかしいのでは、という訳です。もちろん、国によっては、エンハンスメントを天然と認めていない国もあるように聞いた記憶もありますし、厳密に考えれば少しでも処理してあれば「天然」ではないのかなぁという気持ちも私の中にはあります。
それでも、例えばエメラルドなんてエンハンスメントしないと、欠けたり割れたりしやすいのに（エンハンスメントしてあっても、注意が必要なのに）、それが行われないとなると、ちょっと触っただけで欠けたり割れたりすることもあると思うので、すべてがダメなんておかしいのでは？と思っているわけです。消費者にこの石はこれこれこういった処理がされていますいうことを包み隠さずに伝えればいいことでは？と思っています。この処理をしてあることで、こんな利点があります。とか、逆に、処理しないことによって、こんな欠点がありますとか…。あるいは、この処理によって、このような欠点がでてきますが、このような利点もあります。とかね。
話がズレてしまいましたが、現在では、鑑別がしっかりと行われており、安心ですが、鑑別書がちょっと古めのものについては注意が必要とされています。ベリリウム処理が施されていても、そのことが記載されていなかったり、微妙な色＝パパラチアと鑑別していた鑑別機関もあったとかなかったとか。また宝石屋さんと鑑別機関との癒着のようなことがあったらしいことが、Ｓ毎日という雑誌に掲載され、かなり問題視されていたようです。このため、このパパラチアサファイアは、信用を落とすとされ、百貨店や一部宝石店では扱わないところもあったようです。
現在、パパラチアサファイアの鑑別は非常に厳しくなっており、そのようなことはなくなっているそうですが、マスターストーンと呼ばれる鑑別に必要な石が日本では少ない為に、本来パパラチアサファイアとして鑑別されても間違いのない石がピンクサファイアやオレンジサファイアとして売られていることもあるとか、ないとか言われています。
現在でも、「新しい処理を施してあるパパラチアサファイアです」とか「ベリリウム処理を施してあるパパラチアサファイアです」と堂々と販売しているお店もあるようで…寂しい限りです。
※パパラチャと書かれることもあるようですが、当サイトでは、パパラチアで統一しています。
