安物買いの…


まだ、学生の頃。ジュエリーも殆ど持っていなかった私は、それでもいろんなジュエリーが欲しかった。雑誌では、いろんなジュエリーの紹介とともに、大学生が持つジュエリーの数、また、20代OL、30代OLが持つジュエリーの数などが掲載されていた。

バブル絶頂期の頃でも有り、当時の20代OLの平均ジュエリー数は27個。学生でも10個弱ほどと掲載されていて(はっきりとは覚えていないのだけど)そんなにジュエリーを持っていなかった私は、多少焦りを覚えた。しかし、現実問題としてなんにせよお金がなかった。ジュエリーは欲しい。お金はない。アルバイトをして手にしたお金にしたところで、遊ぶ金として消えていき、ジュエリーに使えるお金は、ほんの僅か。その僅かなお金を貯めて、ジュエリーを買いたい。

ちなみに、当時からジュエリーは、気に入ったものを自分で買うもので、貰うものではないと思っていた。気に入らないかもしれないものをお義理で身につけるなんて趣味ではなかったし、自分の気に入ったものを「これ買って」といえるほどずうずうしくはなかったつもりだ。

実際問題、ジュエリーといっても私が欲しいのはファッションリングのような、普段使いのできるもの。今でこそけっこう気軽に買える値段だよねって言えるけれど、学生だった当時は、それでも気軽に…とは言い難いものだった。

しかし、天は私に味方した(と、当時は思った)のだ。大手チェーンのジュエリーショップが雨後の筍のように出来た。結構安めの値段で展開しているお店だし、有名店。新聞にチラシも入ってくるし、突然なにかのセールで半額以下で買えることがあるという事も魅力だった。もちろん、高額商品も展開しているお店だったが、学生だった私は、ファッションリングなどの中でも更に極めて廉価なものを中心に購入した。高くても2万円以下。安ければ数千円の品だ。

当時の私は、宝石の価値という事をなんにもわかっていなかったので、目安は、18Kのもの(当時の私は、18金信者だった)。シルバーは手入れが大変だから、嫌(それ以前に、売っていないけれど)。プラチナは手が届かないからダメ。デザインは、できればasymmetryなもの。これらを満たし、且つ安いもの。という条件ができ、そのなかからピンときたものを購入していたのだか、私の頭の中には「石の品質」という言葉は微塵もなかったし、「ジュエリーとしての価値」という言葉もなかった。宝石店に対する信頼については、「有名だから大丈夫」と私の中で片付けられてしまっていた。有名店だから信頼できるし、例え、それが安くても、当然質のいいものを扱っているはずである…と。

そのような思い込みをしてしまったがゆえに、罰があたったのかどうなのか…。

爪止めが甘く、購入して1週間もたたない内に石が外れて無くなった。さらには別の指輪が同じように爪止めが甘く、ニットの糸に引っかかり、ニットがダメになりそうになった。(しかも、売り物の高級ニットスーツだった。本気で冷や汗物だった。)あげくに、その後、やっぱり石が紛失した。(当時は、爪止めが甘くなることがあるなんて、知らなかった。)さらには、ちょっとぶつけただけで石が割れた。という実に様々なハプニングをもたらしてくれた。

立て続けにそのお店でファッションリングを5つ購入したが、あっというまに3つのジュエリーが使用不能になってしまった。残りの2つもそのお店で購入したものはナニかが起こりそうで、使用はできなかった。(そして、現在そのリングたちはどこにいったか判らない…)

今の私なら、当然のようにお店に行き、直してもらうとか何か行動を起こすのだが、如何せん当時学生だった私は無知だった。1回目は、お店に出向いたが「あら〜石がなくなっちゃったらどうしようもないわね〜。使い方が悪かったんじゃない?直すんなら、石を買わなくっちゃいけないけれど、新しいものを購入したほうが安いし、いいんじゃないの?」と言われどうしていいかもわからずに泣き寝入りしてしまい、そのチェーン店では何も買わないという消極的な行動しかとらなかった。しかし、今思えば、購入してすぐに石が外れるなんてとんでもないことだし、石が割れるということも同様だと思う。硬度が低かったり、劈開などにより、割れやすいのならば、店側は消費者に伝える義務があると思う。実際問題として、硬度と劈開という2つの面から考えても通常の使い方で割れるとは思えない石だった。未だに、何故割れたのかとても不思議に思っている。(もしかして、石の名前が違っていたのでは?という疑問さえ浮かんでくる)

とにかく、「安いジュエリーには何かがある」というのと、「有名なお店だからといって安心しない」さらには、「納得できるまで質問し、それに答えられないようなお店はダメ」というのが私の教訓となった。

結局、学生時代に私が購入したジュエリーで今でも持っているものはたったの1点のみ。夏休み中アルバイトに明け暮れ(1日で、2〜3件のかけもちをして、2週間働きつづけた。)、必死になって貯めたお金の半分を費やして購入したものだった。私の住むところでは、老舗のお店で、少なくとも学生が気軽に入れるような店舗ではなかったが、いろいろな質問に丁寧に答えてもらい、リングは爪止めが甘くなってくるから、何年かに一度、点検してもらったほうがいいよという事を教えてくれたのもこのお店だった。学生だった私にも、丁寧な対応で「お客様」として扱ってもらったこのお店で購入したリングは、今の私には「可愛い」すぎるような気がして殆ど身につけることはないけれど、がんばってがんばって購入した思い出の品なので、リフォームすることも考えてはおらず、一生このままにしておくことだろう。

ところで、現在の私は、必ず保証書をつけてもらい、無料保証期間も確認し、安心してジュエリーを買えるお店でしか購入をしないことに決めている。その他のアフターケアもばっちりで、購入しなくてもちょっとした相談も気軽にできるようなお店が好き。もう、二度と安物買いの銭失いをしないためにも…。

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